香りと神さまの気配を感じて――淡路島の神社を巡る“祈りの旅”
神社や仏閣を訪れると、なぜか心が整う。
ただ静かに手を合わせるだけで、なにか“見えない大きなもの”に抱かれるような感覚になる。
私はお香の世界に身を置く者として、
神社仏閣で感じるこの静けさや、澄んだ空気感が、香りととてもよく似ているといつも思うのです。
今回の淡路島への旅では、神さまの御神気だけでなく、
その場に漂う“香りのような気配”にも深く包まれました。
この旅の記録をお届けします。
巡った6つの聖地と「香り」
枯木神社(かれきじんじゃ)
“枯れる”という言葉には、どこか寂しさがあるけれど、
その奥には、「新たな芽吹き」を待つ静けさがある。
この神社に立ったとき、
まるで焚く前のお香――沈黙の中の力強さを感じました。
~枯木神社について~
日本書紀によると、推古天皇の時代――西暦595年の夏。
淡路島の海岸に、ひと抱えもある大きな木が流れ着いたそうです。
島の人々がその木を焚いてみると、辺り一面に、それまでにない
甘く上品な香りが広がりました。
その香りに驚いた島民たちは、この木を朝廷に献上します。
この香木は、後に聖徳太子が観音像を彫る際の材料として
使われたと伝えられています。
現在も、この香木(沈香)は、枯木神社のご神体として
大切にお祀りされており、地元の方々に深く敬われています。

伊弉諾神宮(いざなぎじんぐう)
国生みの神々、伊弉諾尊と伊弉冉尊。
ここは日本の“はじまり”の地。
大きなクスノキにそっと手を添えると、
白檀のように穏やかで、凛としたエネルギーが伝わってきました。
香りは、時に過去と未来をつなぐもの。
この神宮は、そんな「記憶の香り」が満ちている場所でした。
~伊弉諾神宮~
この神社は、『古事記』や『日本書紀』という日本のとても古い本にも出てくる、
イザナギノミコトとイザナミノミコトという二人の神さまをまつっています。
この二人の神さまは、「日本の国をはじめてつくった」といわれていて、
ここはその大きな仕事(国づくり)をした神さまをおまつりする、とても大切な神社です。
『古事記』や『日本書紀』に名前が書かれている神社の中では、
日本でいちばん古いとされています。




明神岬(みょうじんみさき)
神社ではありませんが、ここもまた聖地。
風と海、そして空がひとつに溶け合う岬。
潮の香りが、香木の焚き始めの瞬間と重なって
心の奥深くにあった淀みが、ゆっくりと流れていくのを感じました。
明神岬には、パワースポットとして知られている洞窟(岩の裂け目)があります。
そこへ行くには、海側の岩場を歩いて向かいます。
この岩の裂け目は「お母さんのおなかの中(産道)」に見立てられていて、
その中をくぐることで、心と体が生まれ変わると言われています。
まるで一度リセットされて、新しい自分として歩き出すような、
そんな神秘的な体験ができる場所です。


岩樟神社(いわくすじんじゃ)
巨石とクスノキが寄り添う神社。
「動」と「静」、「陰」と「陽」がひとつに共存しているような場所。
岩屋港の向かいにある恵比須神社の裏の奥には、
崖の下に小さな**ほらあな(洞窟)**があります。
そこにあるのが、**岩樟神社(いわくすじんじゃ)**です。
この神社には、イザナギとイザナミという日本をつくった神さまのあいだに
最初に生まれたといわれる、**蛭子命(ひるこのみこと)**という神さまがまつられています。
蛭子命は、体がうまくできていなかったために、
小さな船にのせられて海に流されてしまった――というお話があります。
その船がたどり着いたのが「西宮(にしのみや)」。
なので、西宮のえびすさまのルーツ(本当のふるさと)はこの岩屋だと言われているんです。
また、この洞窟は「イザナギの神さまがこもった場所(かくれみや)」とも伝えられています。
中には昔のおまつりに使った神さまの道具などが今もおさめられていて、
とても神聖で、大切にされている場所なんですよ。



恵比須神社
海の神、そして商売繁盛の神として親しまれる恵比須様。
だけど、ここではもうひとつのメッセージを受け取りました。
それは、「ご縁を釣り上げる」ということ。
やわらかくて幸せを運んでくる香りを、心の中で感じました。

安乎岩戸信龍神社(あいがいわとしんりゅうじんじゃ)
名前からしてすでに、神秘が漂う神社。
岩戸と龍――この二つのエネルギーが交わる場所は、
まさに“氣の龍脈”の上にあるように感じました。
私なら、ここでは龍脳(ボルネオール)とカンファー、
そして杉や檜をブレンドした香りをイメージしました。
その香りに包まれて、深く深く内側と繋がれる気がします。


旅の終わりに
神社で感じた「香りのような空気感」。
それは、実際に鼻で嗅ぐ香りというよりも
心の奥で感じる“氣の香り”のようなものだったのかもしれません。
香を焚くこと、祈ること――
それは、どちらも「いまここに、自分の魂を戻すための時間」。
神社仏閣を愛するあなたにこそ、お香の世界を知っていただきたいのです。
香りは、あなたの中の“神さま”と出会うための扉かもしれませんから。
香りと出会ってから、神社を巡る旅は、
ただの観光ではなく「心の巡礼」になりました。
お香は、私の中の聖地をそっと目覚めさせてくれます。
お香づくりに興味がある方は
ひふみお香アカデミー オンラインお香相談会でお待ちしています!
https://hifumi-okou-academy.com/okou-soudan/?menu