千年の香り ― 蘭奢待(らんじゃたい)カードの香り
ひふみお香アカデミー代表
椎名まさえです。
今日は、上野の森美術館で開催中の
正倉院 THE SHOWに行かれた
お世話になっている蒸留の先生から、
貴重な“蘭奢待(らんじゃたい)カード”を
見せていただきました。
※現在このカードは売り切れ中で、
再販は11月1日からとのことです。

香りを嗅がせていただいた瞬間、
ふわっと広がる甘くやさしい香り。
それはまるでシナモンのようで、
どこかバニラを思わせる
まろやかな温もりを感じました。
たった一枚のカードなのに、
香りが心の奥までしみわたり、
何度も何度も嗅いでしまいました。

蘭奢待とは
蘭奢待は、奈良の東大寺正倉院に
今も保管されている名香であり、
かつて織田信長や足利義満、
そして明治天皇も、香木の一部を切り取って
拝香したと伝えられています。
この香木は、東南アジアの山岳地帯に生える沈香(じんこう)の一種で、
重さは約11.6キログラム、
長さは156センチメートルにも及びます。
※正倉院 THE SHOWでは
レプリカが展示されています。

名前の「蘭奢待(らんじゃたい)」の中には、
実は「東大寺」という文字が
隠されているのです。
「蘭(東)・奢(大)・待(寺)」
三文字の中に東大寺が隠されています。
この名前は、
東大寺の宝物であることを示すため、
そして、香木そのものを神聖な存在として
守るために名づけられたと伝わります。
香りは古来より、祈りや浄化の
象徴として尊ばれ、
蘭奢待はまさにその象徴的な
存在といえるでしょう。
THE正倉院で再現された蘭奢待の香り
上野の「正倉院 THE SHOW」では、
この蘭奢待の香りを科学的に分析し、
ガスクロマトグラフィーなどの
最新技術を用いて香り成分を測定。
香料メーカー「高砂香料工業」が、
その香りを再現したものを実際に
私たちも体験することができます。


香りの再現技術と、
千年の祈りが出会う場所。
まさに古代と現代の香文化がつながる
大変貴重な空間です。
そして私も、11月4日に
受講生のみなさんと一緒に
「正倉院 THE SHOW」を訪れる予定。
どんな香りと出会えるのかな
今からとても楽しみです。
香りは、時を超えて心をつなぐもの。
今日の香り体験が、またひとつ、
私の中で新しいインスピレーション
となりました。
上野の森美術館の
正倉院 THE SHOWは11月9日までです。