香りが歴史と敬意を結んだ夜 〜双葉山と北辰一刀流のご縁〜

お香にまつわるお話

香りが歴史と敬意を結んだ夜 〜双葉山と北辰一刀流のご縁〜

主人が宗家を務める
北辰一刀流の皆さんと両国にある
第35代横綱・双葉山関のお孫さんのお宅
訪問させていただくという
特別すぎるご縁に恵まれました。

武道の世界も、相撲の世界も、
日本の精神文化を支えてきた「道」。

その中心にある方のご家族と
ご縁をいただけたこと自体が、
胸に残る出来事でした。


双葉山とは ― 昭和の“伝説の横綱”

双葉山(ふたばやま)定次は、
昭和初期に活躍した大横綱です。

相撲を詳しく知らない方でも、
「伝説の力士」と聞けば
名前が挙がるほどの存在。

なぜなら――

69連勝

という、今も破られていない
大記録を残した力士だからです。

勝負が一瞬で決まることも多い
相撲の世界で、約3年もの間、
負けなしで勝ち続けたという偉業。

この記録は現在でも相撲界最高の
伝説として語り継がれています。


右目の不自由を抱えながら頂点へ

さらに驚くべきことに、
双葉山は幼少期の事故により
右目の視力を失っていたとも
言われています。

相撲は一瞬の駆け引きの世界。

視覚にハンデがありながらも、
努力と精神力で頂点に立った姿は、
多くの人々の心を打ちました。

「強さ」とは、
ただ力があることではなく、
己を磨き続ける姿勢なのだと
感じさせられます。


座右の銘「木鶏(もっけい)」

双葉山が大切にしていた言葉に

木鶏(もっけい)

があります。

これは中国の古典に由来する言葉で、
「木でできた鶏のように、
揺るがぬ心を持つ」という意味。

外に強さを誇示するのではなく、
内面が静かに整い、
どんな勝負の場でも動じない境地。

双葉山はまさに、
その精神を体現した
大横綱だったのでしょう。


手づくりお線香をお供えできた感動

お部屋に入ると立派なお仏壇があり、
私はそこへ、そっと――

自分の手で作ったお線香を
お供えさせていただきました。

歴史に名を刻む大横綱、双葉山関に
お線香を供えられる日が来るとは。

胸がいっぱいで、ただただ感無量でした。


香は時代を越えて、敬意を形にするもの

香りとは、ただ良い香りを
楽しむものだけではなく、
敬意を届け、祈りを添え、縁を結ぶもの

とくにお香は時代を越えて、
歴史と今を静かにつないでくれる。

そんなことを改めて深く感じた夜でした。


木鶏の精神と香づくり

双葉山が大切にした「木鶏」の精神。
それは、外に強さを誇るのではなく、
内側を静かに整え、
揺るがぬ心で在ること。

私はこの言葉に、
お香づくりの本質を
重ねずにはいられませんでした。

香を調える時間もまた、
ただ香りを作るのではなく、
自分の心を整え、
敬意を形にしていく道。

派手さではなく、静けさの中に宿る力。
香司の仕事とは、まさにその
「木鶏」の境地に近いのかもしれません。


お香を調えることは、心を調えること。
静けさの中にこそ、本当の強さが宿る。

香は、心の武道
だと思います。

タイトルとURLをコピーしました